( Interview )
働きにくさを変えるために起業した女性社長の挑戦
オフィスHanako株式会社 代表取締役 渡辺 さゆりさん
オフィスHanako(新潟市中央区)は、「住宅業界には女性社員の活躍が不可欠」という代表取締役 渡辺さゆりさんの信念のもとに設立された工務店です。定額制の注文住宅を軸にして、社員51人のうち女性が約7割という体制で、旧来の常識にとらわれない工務店経営に挑んでいます。その取り組み内容についてお話を伺いました。

オフィスHanako株式会社
代表取締役
渡辺 さゆりさん
建築業工務店に生まれ育ち、家業を支えながら大工学校で技術を習得。家事・育児経験を活かした提案は顧客に高く評価される。しかし、女性が働きにくい建築業界の現状を痛感し、自ら起業。「女性が働きやすい環境」で「経験に基づく実務レベルの提案」を行った工務店を営んでいる。
家づくりの仕事の誇りを胸に
女性が長く活躍できる会社を起業
オフィスHanakoの創業は2011年で、工務店を家業とする渡辺さんが自分の理想を実現するために独立し、立ち上げました。当時の住宅業界は男性主導で成り立っており、家づくりの仕事に誇りを持っていた渡辺さんは大工修行を希望したが、当時は許されなかったそうです。
父から「お前は何者だ」と言われた事で、渡辺さんは奮起し、営業、設計、現場管理など工務店の一連の業務を習得しました。のちに職業訓練校で大工の技術を学び、新潟県内で女性初の卒業生となりました。
その一方で、「女にできるわけがない」と否定され続けた自身の経験から、「旧来の男性社会のままでは、女性は長く働き続けることができない」と思い知ります。「だったら自分の会社をつくればいい」。渡辺さんは当時からこのように考えていたといいます。
創業後は、結婚、妊娠・出産、育児など女性社員に訪れるライフステージの変化に柔軟に対応できるような勤務体系を整備していきました。夏休みなどの長期休暇や急な出社で子どもを預ける先に困る社員のために、「子連れ出社OK」に。また、子どもの学校行事などのためにちょっとだけ仕事を抜けたいという場合のために、1時間単位で有休を申請できる制度を設けました。社員の健康管理のために社員食堂も設置し、社員が働きやすい環境づくりに注力しています。

誰も辞めなくていい会社を目指して
そんな渡辺さんの現在の目標は、社員も顧客も地域の人々も一体となって過ごせるような「HanakoPark」の実現です。HanakoParkを軸に、社員も職人も年齢やステージの変化に伴って役割を変えながら仕事を全うできる体制をつくります。顧客に対しても新築からリフォーム、売却、不動産活用まであらゆる年代で求められるニーズに対応して生涯にわたってお付き合いできるようにしたいといいます。
このような理想の場をつくるため、渡辺さんは、旧来の住宅業界の常識にとらわれず、いいと思ったことは躊躇なく取り入れ、過去にとらわれない、女性も活躍できる工務店経営を実現しています。

※座談会当日の投影スライド
現場からバックオフィスまでDXを推進
オフィスHanakoでは、施工管理の効率化を目的に「ANDPAD」を導入しています。ANDPADの使い方や便利なポイントについて、スタッフの皆さんにお伺いしました。
同社では、施工品質を保つため、着工中に7回の第三者検査、35回の自主検査を実施しており、その都度に施工部位を撮影し、記録を残しています。第三者検査では現場担当者が必ず立ち会いますが、自主検査では協力会社に撮影を依頼することも多いといいます。協力会社は施工に注力するため、写真がなかなか提出されないということがあり、現場担当者の悩みの種になっていたそうです。
「検査時には“ANDPAD検査”を導入しました。現場ごとに協力会社とチャットできるので意思疎通がスムーズになり、写真もスマホで撮ってアップするだけでフォルダにおさまるので、手間がかかりません。「ANDPAD受発注」も活用し、案件の検収時には施工写真の格納が確認できた後に協力会社に支払いをするという仕組みを確立しています。
「昨年からは「ANDPAD検査」と中央グループの検査マニュアルが連携され、ANDPADに収められた施工写真をそのまま第三者検査に使用できるようになったのも、便利なポイントです」とお話しいただきました。

設計ディレクターの和中貴江子さんも「協力会社と情報を共有できるのはありがたい」と喜びます。従来は大判の分厚い設計図書を持ち歩き、設計変更があるたびに協力会社に内容を理解してもらう必要があったそうです。
「ANDPADなら、協力会社に渡す図面をアップするだけ。さらに協力会社の方々とのやり取りが履歴として残るのもいいですね。思い違いや誤解による手戻りやミスを軽減できています。これを受け、今後はお施主様とつながるツールの導入も検討していきたいと考えています」。
売上115%・社員年収5%アップに向けて
ANDPADを取り入れた効果は、経理部門にも波及しています。従来、同社では約50社にも及ぶ協力会社から毎月、様々な書式の請求書が郵送やファックスで送られてきており、管理部門では、それらを一通ずつ自社の書式に転記、社内で回覧し、各担当者の確認後支払い処理を行っていました。
管理部部長の佐藤千晴さんは、「ANDPADなら、協力会社が記入した金額がそのまま処理できるので、管理部で転記する手間が不要になりました。印刷して回覧する必要もなく、各担当者がANDPAD上でチェックできるので、支払い処理までかかる時間も短縮できます」と導入後の変化を話します。今後は、顧客からの入金についてもシステムに取り入れて、粗利管理などにも役立てる予定とのことです。
ANDPAD導入をきっかけに施工、設計、経理の各部門で社員の負担が軽減し、オフィスHanakoでは、よりクリエイティブな面に注力できる余裕が生まれつつあります。

渡辺さんが目指す年間115%の成長、社員の年収を年間5%ずつ上げるという目標達成のためにも、DXを活用していきたいとお話しいただきました。
オフィスHanako株式会社:
https://www.hanako39.jp/
ANDPAD Women AND Construction 特別座談会開催レポート:
https://page.andpad.jp/and_women2025/report/
取材・文/新建ハウジング 写真/小関 晃典
(新建ハウジング 6月30日に掲載されたものを許可をいただき、一部改変しています)